理論と実験の協奏による柔らかな分子系の機能の科学-文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」領域代表者 田原太平 (平成25-29年度) やわぶん

 

A03項目 柔らかな分子系創成

 高い機能をもつ複雑分子系の構築は合成化学など物質創成研究の目標であり、また天然に存在する生体分子の機能を自由に制御することは生命科学研究の目標です。合成化学、遺伝子工学の発展は、超分子構造の構築や生体分子の機能解明をもたらしましたが、超分子や生体分子を用いて新たな機能創成を達成した例は未だ限られています。これを行うためには、複雑分子系の柔らかさ、すなわち構造変化のダイナミクスを理解することで、戦略的に機能発現を実現する道筋を切り拓くことが望まれます。

 本研究項目では、合成化学・遺伝子工学を駆使して、柔らかさを有する分子系である超分子や生体分子の新たな機能を創成します。超分子系においては、例えばビルディングブロック分子の自己組織化により新しい集合体構造から新規機能を発現させます。生体分子では、遺伝子工学的手法を駆使して機能の改変・転換を実現することで、構造と機能を結ぶ柔らかさの本質に迫ります。これらの研究を戦略的に進めるためには、複雑分子系の柔らかさを正しく理解することが不可欠であり、A01項目の理論計算、A02項目の先端計測と連携することによって、独創的な機能の創成を実現します。

TOPICS
機能創成を試みる
超分子や生体分子の例

機能創成を試みる超分子や生体分子の例

テーマ

(1) 合成化学的手法による機能をもった複雑分子系の創成
(2) 自己組織化を用いた超分子集合体の機能創成
(3) 遺伝子工学的手法による生体分子系の自在な機能転換や機能発現

キーワード

超分子、物質創製、アミノ酸変異、機能転換、構造ダイナミクス

研究分野

合成化学、錯体化学、高分子化学、生化学

計画研究課題

光応答性タンパク質の機能転換が明らかにする柔らかな構造機能相関

代表:神取 秀樹 (名古屋工業大学大学院工学研究科 教授)

井上 圭一 (名古屋工業大学大学院工学研究科 准教授)

片山 耕大 (名古屋工業大学大学院工学研究科 助教)

山田 大智 (名古屋工業大学大学院工学研究科 特任助教)

岩田 達也 (東邦大学薬学部 准教授)

柔らかな連続多点配位性を持つ有機多核金属複合体の創成

代表:村橋 哲郎 (東京工業大学物質理工学院応用化学系 教授)

山本 浩二 (分子科学研究所協奏分子システム研究センター 助教)

精密分子設計による光応答を指向した超分子材料の開拓

代表:中西 尚志 (物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 グループリーダー)

吉沢 道人 (東京工業大学科学技術創成研究院 准教授)

石原 伸輔 (物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 主任研究員)

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公募研究課題 (平成 28 ~ 29 年度)

柔らかなシクロファンを用いた機械的刺激応答性発光材料の開発

代表:相良 剛光 (北海道大学電子科学研究所 スマート分子材料研究分野 助教)

玉置 信之 (北海道大学電子科学研究所 スマート分子材料研究分野 教授)

プロリン型人工アミノ酸をモジュールとするα-アミノ酸ペプチドの構造化効果

代表:尾谷 優子 (東京大学大学院薬学系研究科 講師)

有機小分子の構造ダイナミクスを利活用した蛍光プローブのデザイン・合成

代表:花岡 健二郎 (東京大学大学院薬学系研究科 准教授)

非平面π共役分子ヘリセンの集積化と光学機能の制御

代表:中野 幸司 (東京農工大学工学部 有機材料化学科 講師)

内藤 昌信 (物質・材料研究機構元素戦略材料センター 主幹研究員)

柔らかな細孔表面をもつタンパク質結晶設計

代表:安部 聡 (東京工業大学生命理工学院 助教)

RNAアプタマー・スイッチング素子・蛋白質のスライディングの動作原理の解明と活用

代表:片平 正人 (京都大学エネルギー理工学研究所 教授)

永田 崇 (京都大学エネルギー理工学研究所 准教授)

真嶋 司 (京都大学エネルギー理工学研究所 助教)

高分子鎖の柔剛変換に基づく高電荷移動度分子ワイヤの設計と合成

代表:寺尾 潤 (東京大学大学院総合文化研究科 教授)

柔らかなタンパク質反応場の論理設計に基づく高活性な金属酵素の開発

代表:大洞 光司 (大阪大学工学研究科 助教)

林 高史 (大阪大学工学研究科 教授)

柔らかなループ部位の構造変化を利用した機能性蛋白質多量体の創成

代表:廣田 俊 (奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科 教授)

長尾 聡 (奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科 助教)

山中 優 (奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科 助教)

ジアゾ酢酸エステルの精密重合に基づく官能基集積型高分子系の創成と機能発現

代表:井原 栄治 (愛媛大学大学院理工学研究科 教授)

スイッチング機能を有する柔らかな分子結晶の開発

代表:佐藤 治 (九州大学先導物質化学研究所 教授)

分子凝縮系の柔らかさが生み出す新しいエキシトン機能

代表:楊井 伸浩 (九州大学工学研究院 准教授)

プロトン移動現象と光異性化反応の融合による光応答性有機強誘電体の創出

代表:森本 正和 (立教大学理学部化学科 教授)

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公募研究課題 (平成 26 ~ 27 年度)

プロリン型の非天然アミノ酸の柔らかいアミド結合に基づいた規則構造制御

代表:尾谷 優子 (東京大学大学院薬学系研究科 講師)

アゾ基の構造ダイナミクスを利用した蛍光プローブの創製

代表:花岡 健二郎 (東京大学大学院薬学系研究科 准教授)

ねじれたπ共役分子をモジュールとする機能性材料の創製

代表:中野 幸司 (東京農工大学工学部 有機材料化学科 講師)

内藤 昌信 (物質・材料研究機構環境・エネルギー材料部門 主幹研究員)

蛋白質の捕捉と酵素活性のスイッチングの二面性を有するRNAの動作原理の解明と活用

代表:片平 正人 (京都大学エネルギー理工学研究所 教授)

永田 崇 (京都大学エネルギー理工学研究所 准教授)

伝導性高分子鎖のエントロピー制御に最適な分子設計と合成

代表:寺尾 潤 (京都大学大学院工学研究科 准教授)

柔らかなタンパク質反応場を利用した立体選択的金属酵素の論理的開発

代表:大洞 光司 (大阪大学工学研究科 助教)

林 高史 (大阪大学工学研究科 教授)

光・電子過程を内包するメタロセン系イオン液体の開発と動的挙動の解析

代表:持田 智行 (神戸大学大学院理学研究科 教授)

柔らかな分子系としてのポリ(置換メチレン)の応用に関する研究

代表:井原 栄治 (愛媛大学大学院理工学研究科 教授)

巨大な外場応答を示す柔らかな分子結晶の開発

代表:佐藤 治 (九州大学先導物質化学研究所 教授)

フォトン・アップコンバージョンを示すイオン液体の創出

代表:楊井 伸浩 (九州大学工学研究院 助教)

光応答性分子結晶の構造変化による固体物性制御

代表:森本 正和 (立教大学理学部化学科 准教授)

非平面共役分子の動的解析に基づく組織化法の開発

代表:中西 和嘉 (物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 研究者)

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